イタリアのおいしい話 #1

「 ポルチーニ 」



 驚いたことにポルチーニというイタリア産の‘フレッシュ’きのこを、最近は東京の高級スーパーやデパートなどでチラホラと見かけるようになりました。生のポルチーニは傷みやすく、香りや風味もすぐに変わってしまうデリケートな食材ですから、イタリアからグルメ大国日本まで飛行機で大切に運ばれてきたに違いありません。

 ポルチーニ茸は日本で言えばマツタケに匹敵するイタリアの高級きのこで、豊かな香りと旨み、シャキッとした独特の歯ごたえが珍重されています。マツタケは松の木にはえる茸ですが、ポルチーニ茸は樫、栗、ぶな、けやき、松などの樹木に育ち、専門家によると宿となる樹木によって姿形、味、香りなど微妙に異なるそうです。
 豊かな香りを逃がさない為に決して水洗いをすることなく、濡れた布巾やペーパーなどでそっと汚れをふくところもマツタケと同様。
 ポルチーニを扱うマンマの手ぎわもいつになく丁重で、それを見守る家族みんなに「おいしいものが食べられるゾ」というどこか昂揚感が漂っているところも、マツタケを取り巻く環境に似ています。

 ただ高級とはいっても国産のマツタケほどは高くなく、メルカートと呼ばれる市場では長さ15cmくらいの平均的な大きさのもので1本300円から400円くらい。ちょっと奮発すれば庶民の食卓にも充分のぼる値段といったところでしょうか。
 ソテーしてパスタの具になるのはもちろん、リゾットにしたり、フリットという揚げ物にしたりとレシピもたくさんあります。

 でもなんと言っても、トスカーナの田園で味わったグリルのおいしさが一番。大きめの1本を縦2つに手で裂き、薪で香ばしくさっと焼いたら上質のオリーブ油をたらりとかけ、自然塩をひとつまみ。
 そしてほんの少しのレモン汁。アツアツをふーふー言いながらダイナミックに頬張るポルチーニの味わいは、トスカーナの秋の風景とともに、今でも記憶に残っています。

 さてこのポルチーニとエリンギの歯ざわりが似ていることを目ざとく見つけ、教えてくれたのは在日のイタリア人達でした。
 早速、買ってにんにくを効かせてソテーにし、イタリアンパセリのみじん切りをパァッと散らしてみたら、あら、あら、ほんと。それ以来すっかりエリンギファンになった私です。
 確かに歯ごたえは似通っているものの、味わいの点で物足りないのは仕方ありません。ポルチーニではないのですから。
 そこで私はマッシュルームで旨みを、さらに乾燥ポルチーニで香りと旨みとプラスするという2段階式ステップアップ方で‘ポルチーニもどき’を楽しんでいます。
 
 ある晩、イタリア通のお客様を我が家に招いた時のこと。ラビオリと呼ばれる詰物をした手打ちのパスタを作り、中身をこの‘ポルチーニもどき'にしてお出ししたら、最後まで皆さんがなんの疑いもなく本物のポルチーニだと思い込んでいるので、してやったり。なんだか妙にうれしくなりました。



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