イタリアのおいしい話 #10

「 ローズマリーの香りでイタリアン 」



 「ローズマリーをたくさん頂いたのですが、なにか良い保存法はありますか?」 そんなメイルがサロンの生徒さんから届きました。

 バジル、イタリアンパセリ、セージ、タイム、オレガノ....イタリア料理には欠か せないハーブ類ですが、なかでもその香りを嗅ぐだけで、いいえ香りを思い浮かべる だけでもイタリアの空気がふんわりと漂ってくるような気持ちになるのが、私にとっ てはローズマリーなんです。

 ローズマリーと言えば、オリーブ油に漬けてハーブオイルを作るという方法を日本 の雑誌などでよく見かけました。
 こうしておくと香りのついたオリーブ油をすぐに調 理に使えて便利という説明。そしてたいていは素敵なキッチンの窓辺にハーブが入っ たおしゃれなオイル瓶が並んでいる写真が添えてあります。
 ただどういう訳か、イタリアの家庭でそんな風景に出会った記憶がありません。こ んな風に遠回りなやり方は、イタリアマンマには似つかわしくないような気もします。
  たいていは調理の毎に、そのつどオリーブ油の中に枝ごとダイレクトに放り込んでい きます。たまたま私の知り合いのマンマ達のやり方なのかもしれませんが、個人的に もこちらのほうが好きで、オリーブ油が熱してくるにつれてローズマリー独特の強い 香りがパァーッと立ち上がってきて、イタリア気分満点。

 こうしてローズマリーの風味が充分に移ったオリーブ油で鶏肉をこんがりと焼きつ けてみてください。仕上げに自然塩をパッとふりかけるだけ。それだけの超シンプル な料理なのに、とびきりおいしいイタリアンが出来上がります。
 仮にローズマリーを使わなかったとします。するとなんともポイントを欠いた、た だの鶏肉のソテーになってしまうではありませんか。 
 ローズマリーの威力、恐るべし。ハーブ使いでは定評のあるトスカーナ地方の肉屋さんでは、大きな肉の塊りにロー ズマリーを枝ごと、どさっとダイナミックにタコ糸で巻きつけて売っています。

   トスカーナの田園地帯では、背丈ほどもある野生のローズマリーをそこここで見か けました。それはハーブというより樹木と呼んでよいくらいの幹の太さで、日本のスー パーマーケットで見ていたパック入りの遠慮がちなローズマリーとはかなり印象が違 います。
  以前プロの料理人に混じってシエナ近郊の田園地帯にある寄宿舎に入って料 理の勉強をしていたことがあります。その寄宿舎の近くにも野生のローズマリーがた くさん生えていました。
  でもあまりに大きく、始めのうちはそれがハーブであること に気づかなかったくらい。なんだかたくましい樹木の脇を通ると、ふわぁっと良い香 りが鼻先をかすめて、それがローズマリーであることにやっと気づいたのです。

 それまでに何回か観光でイタリアを訪れてはいましたが、独りで何か月も滞在する のは初めてでしたから、ローズマリーの香りは、その頃のちょっぴり心細かった気持 ちともリンクして、特別なイタリアの香りとして蘇ってくるのです。
 ところで生徒さんからの質問には‘ハーブ塩'をお薦めしました。ローズマリーだけ でなく、イタリアンパセリ、タイムなどほかのハーブと一緒に細かく刻んで自然塩に 混ぜておきます。鶏肉や豚肉、魚などにすり込んだり、詰めたりと結構幅広く使えます。
  
じゃがいもにオリーブ油と一緒にハーブ塩をふりかけ、オーブンで焼くだけでも 美味。イタリアではこのハーブ塩が市販されていますが、自分だけのオリジナルブレ ンドを作っているマンマもいます。
 と言ってもハーブ塩だけでは使う量はしれていますので、ローズマリーの保存法と しては物足りないかもしれません。この今度イタリアに行った時、マンマ達に早速聞 いてみることにしましょう。



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