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旬の感覚が薄れている日本の野菜の中で、そら豆は初夏にならないと手に入らないものとしてずっと頭の中にインプットされていました。ところ
が去年、このそら豆が2月に入るともう近くのスーパーに並び、あら?っ と思ったものです。それはとぎれる事なく本来の旬である6月〜7月初め
の頃まで店頭に並んでいました。
そして今年も同様、早くも顔を見せています。聞くところによると、そ ら豆の出回り期がずいぶんと長くなってきているそうな。
そら豆好きの私としてはうれしいものの、でも初夏の一時期にしか頑と して顔を見せなかったそら豆が懐かしいようでもあり、ちょっと複雑な気
分です。
さてトスカーナ地方に春先に滞在していると、そら豆とペコリーノチー ズの前菜によく出会います。
そら豆とペコリーノチーズをオリーブ油でさっとあえただけのシンプル な一品ですが、とてもおいしいものです。そら豆は小指の先くらいのまだ
小さい若採りのもの。トスカーナでは4月からせいぜい5月初めにかけて のわずかな期間しか出回りません。
この地方の方言でバッチェッリと呼ばれて親しまれているこの若採りそ ら豆は、ゆでずにそのまま食べるのがポイント。初めてごちそうになった
時は「えっ?生で食べるのですか?」と思わず聞いてしまいましたが、 生の豆独特の青臭さがあって最初は抵抗があるものの、食べ慣れてくると
これがなかなか乙な味わい。
ペコリーノチーズというのは羊の乳を原料にした、トスカーナ地方の代 表的なチーズで、直径20cmくらいの丸い形をしています。
若採りのそら豆と組み合わせるのはなかでも熟成の若いタイプで、冬に 仕込んだチーズがどうやらやっと食べられるくらいに熟成したというレベ ルとか。土地人達は‘生まれたばかりのペコリーノチーズ’と表現してい ました。ペコリーノは5mm角くらいのコロコロに切ったり、薄く削った りしてそら豆と合せます。
オリーブ油は、もちろんトスカーナ産の上質なエキストラヴァージン。
レストランではそら豆とチーズに塩、こしょうをふってオリーブ油であ え、アンティパストとして供されることが多いのですが、去年の春滞在し
ていたシエナの知り合いの家では、食事の後にこの若採りのそら豆がさや つきのままかご盛りでドサッと食卓に出ました。さやからひとつひとつ各
自がむきながら、塊りのペコリーノをこれも各自勝手にチーズナイフで適 当に砕き、オリーブ油をまわしかけては口に放り込みます。と、かなりラ
フな食べ方でしたが、ワインを片手におしゃべりをかわしながら、若採り そら豆のかごを囲んでの団欒は、レストランでは決して味わえない素敵な
食後のひと時でした。
ペコリーノチーズは残念ながら日本ではまだまだ限られた高級スーパー かチーズ専門店に行かないと手に入りません。しかも熟成の若いものはか なり特殊なので、普通のタイプで。またペコリーノがなければパルミジャー ノで代用します。若採りのそら豆も手に入らないので、普通の大きさに育っ たそら豆をさっとゆでて使います。
イタリアっぽい味わいに近づけたいなら、青臭さが残るくらいにゆで時間 を短くして。青臭さはどうも、という場合はもちろんいつものようにゆで
てもそれなりに簡単でおいしい前菜が楽しめます。
若採りのそら豆と、生まれたてのペコリーノ。このふたつのフレッシュ な味の組み合わせはいかにも早春のトスカーナにふさわしく、4月も真近
なこの頃になると必ず思い出される一品です。 |
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