イタリアのおいしい話 #13

「 カルボナーラに生クリームを入れますか? 」



  「えっ、本場のカルボナーラって生クリームを入れないの?」 イタリア人から初めてカルボナーラを習った時の驚きです。それはクリー ミィではあっても、ねっとりとパスタにからみつく生クリーム入りソー スと違ってどこかスルリとした感触。なんと言ってよいか…… 口にし た瞬間に‘卵かけご飯' という料理名が唐突に頭に浮かびました。

  カルボナーラは生のパンチェッタ(豚バラ肉の乾燥塩漬け)と卵で作 るパスタ。日本でとても親しまれているパスタなので、レシピをご存知 の方も多い思いかもしれませんが、溶き卵にすりおろしたチーズを混ぜ、 別に炒めておいたパンチェッタとゆで上げたパスタを手早く混ぜ合わせ て作ります。

 この溶き卵にはチーズだけでなく生クリームを加えたレシ ピを何回も習っていたので、ちょっとびっくりした次第。ちなみにパン チェッタは、日本では手に入りづらいのでベーコンで代用するのが一般 的です。  

  ではなぜ日本の料理本で紹介されるカルボナーラのほとんどのレシピ には生クリームが入っているのかしらん。そんな疑問にひとつの答えを くれたのが、イタリア在住の日本人シェフ。 「オリジナルのレシピを知らないという事はないと思うので、たぶん失 敗を避ける為じゃぁないかな。それにレストランなんかで何人分もまと めて出す時は、生クリームを加えたほうが作りやすいという一面もある し」  カルボナーラはシンプルなようで、タイミングがとても難しいパスタ です。

  ゆで上がったパスタにチーズ入りの卵液をからめる際に、火が入 り過ぎてポロポロな炒り卵状になってしまっては台無し。ここだけは鍋 を一瞬火からはずし、余熱でパスタにからめるようなつもりで、とタイ ミングと火加減に注意を集中する必要があります。クリーミィを目指し て一発勝負のパスタ。ですから、確かに卵液に生クリームを加えておく と上手につながり、少しぐらいモタモタしていても結構うまくでき上が るのです。

  ミラノで料理学校を経営する知り合いにこの点を聞いてみると、 「生クリームをカルボナーラに入れてしまうともうそれはまったく別の ものです」と明言し、でもその後で「牛乳を少し加えるのは構わないん だけれどね」と付け加えてくれました。  

  今ではローマの典型的なパスタとして知られているカルボナーラです。GRANDEENCICLOPEDIA ILUSTRATA DELLA GASTONOMIA というイタリ アのぶ厚い食の辞典によると、このパスタがローマで親しまれていった のは第二次世界大戦後とか。もともとはラツィオ州のチッチァリーア地 方に住む炭焼き職人達の伝統的なパスタで、戦火を逃れてこの地に逃げ 込んだ人々がそのおいしさに触れ、戦後、州都であるローマに戻ってか ら広めていったそうな。

  イタリアならどこにでもある身近なパンチェッ タと卵、チーズだけでできる簡便さが、戦後すぐの食料不足の時代にう けてとても流行ったそうです。

  カルボナーラとはイタリア語で”炭焼き 党員の”という意味。炭の粉をイメージして仕上げに黒こしょうをたっ ぷりふります。  もちろんこの本のレシピに生クリームは入っていません。にんにくも 使わず、チーズはローマ産のペコリーノチーズ。さらに”パンチェッタ は燻製したものを使っては駄目、絶対に生。グアンチャーレ(豚ほほ肉 の塩漬け)で”と明記してあります。つまりベーコンで代用するなどもっ ての他という事でしょうか。

  うーっむ、そう言われても。日本では仕方 ないなぁ、だって高級スーパーまで出かけないとそんなもの手に入らな いんだもん。とこのくだりを読むと、しょせん、本場の味なんて無理、 どうせ無理なら生クリームを入れたって自分にとっておいしければ構わ ないじゃんと、少々開き直りたい気分にもなります。  

  ではローマで習ったレシピを以下に。

<スパゲッティ・アッラ・カルボナーラ>   材料(2人分)
スパゲッティ(ブカティーニも可)               180g
グアンチャーレ(またはパンチェッタ)             70g
卵                                 2個
ペコリーノチーズ、パルミジャーノレジャーノ 合わせて  50g
バター(本来はラルド)                     10g
塩、黒こしょう                         各適宜

作り方
1) パンチェッタは幅5mmくらいの細切りにし、バターを熱して   カリッと炒める。
2) ボールに卵を溶き、チーズをすりおろして加え、こしょうも混ぜておく。
3) パスタをアルデンテにゆで、のパンチェッタの鍋に入れる。
  一度火から鍋をはずしてパスタのゆで汁少々との卵液を加えて   
  手早く全体をあえ、塩味をととのえる。ここでクリーミィな状態になって   
  いなかったら再び軽く火にかけて濃度を調整する。 
  ただし火を 入れ過ぎないこと。   
4) 器に盛って黒こしょうをたっぷりふる。



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