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"カッチャ"はイタリア語で"狩り"のこと。カッチャトーラはもともとは
狩猟でしとめた雉、ほろほろ鳥などの野鳥類やうさぎを、野原でさばいて、 ひとつ鍋の中で煮たのが始まり。そんな話を教えてくれたのはフィレンツェ
の郊外に住むロレンツァさん。フィレンツェの語学学校で外国人相手にイ タリア料理を長い間教えていた彼女は、私の大切な料理の先生です。
カッチャトーラは古くからイタリア中で作られてきた家庭料理なので、 カッチャトーラ風(Alla
cacciatora/猟師風)と呼ばれるものには実に様々 なヴァリエーションがあります。イタリアの辞書によると、「一般的に、
北のほうでは玉ねぎやトマト、ラルド(豚の背脂の塩漬け) またはパン チェッタ(豚バラ肉の塩漬け)などが入り、南のほうではにんにく、ローズ
マリー、ワインビネガーなどが入る」と書かれていますが、州によって、 家によっても流儀が違っていたりして、なかなか辞書のようにすっきりと
はいかず、興味深いのです。肉の種類は、家庭では鶏肉やうさぎが一般的。 レストランではほろほろ鳥や子羊などを使ったりもします。
そのロレンツァの作る鶏のカッチャトーラ(Pollo alla cacciatora) は、まさに狩りのイメージを彷彿とさせるような、ダイナミックなひと皿。 イタリアで鶏といったら1羽丸ごとが普通。日本のように胸肉やもも肉と 部位ごとにきれいにパックされて売られているのとは違って、主婦は丸ご と1羽を買ってきては器用にさばき、いろいろな料理に使い分けるのです。
「こうして骨つきのもも肉、胸肉、手羽……といろいろな部位が入るこ とで味に力強さがでるのよ」。ロレンツァから教わったカッチャトーラの ポイント。我が家で作る時にもなるべくいろいろな部位を入れるようにし ています。 大ぶりに切り分けた鶏肉をローズマリーなどのハーブと一緒に強火でガッ と焼きつけたら白ワインを注いで、トマトの水煮とブロード(スープ)、塩 を加えて1時間ほど煮込みます。トマトの量はほんのり赤みがでるくらい。
今年、夏の終わりにトスカーナ州のコルトーナという地域のアグリツー リズモで食べたカッチャトーラには、出始めのポルチーニがたっぷり入っ ていました。にんにくとハーブを効かせたこのきのこ入りカッチャトーラ は、いかにもトスカーナの田舎という感じに塩も強めに効かせ、野趣豊か なとびきりの味わいでした。大ぶりに切った鶏肉はどれも骨つき。中には 骨だけでは?と思われる食べるのに手ごわい塊もあって……。鶏肉はもち ろん、その旨みを充分に吸ったポルチーニがとりわけ美味でした。
ロレンツァ風カッチャトーラ同様にトマトはほんの少し。個人的にもト マトで真っ赤になったカッチャトーラより、トマトは入れないか、入れて も色がほんの少しつくか、つかない程度に加えるくらいのレシピが好きで す。
在日イタリア人の友人レナートさんは「カッチャトーラだったら絶対に うさぎ」と譲りません。マンマの作るうさぎ肉のカッチャトーラ(Coniglio alla cacciatora) こそが、彼の味。
「うん、わかる。わかる。うさぎっておいしいよねぇ」 イタリアの市場やスーパーに並ぶ、1羽丸ごと毛をむしられてパックされ た哀れな姿のうさぎを心に浮かべつつ、ひとしきり鶏肉とうさぎ肉の味の 違いで話が盛り上がった後はいつも「でも、東京でうさぎを食べるのはちょっ と無理かも。
余程 本格的なレストランに行かない限りはね」と彼の熱い 思いに水をさしておきます。 その毎に、ここ何年もイタリアに帰っていないレナートさんは、「あー、 うさぎのカッチャトーラ、食べたいなぁ」とうわ言のようにつぶやいては、 深いため息をつくのでした。
* きのこ入り 鶏肉のカッチャトーラ 材料(4人分)
鶏肉(骨付ぶつ切りのもも肉、手羽元、胸肉など合わせて) 約700〜800g
マッシュルーム、エリンギなど好みのきのこ類を合わせて 約300g
ローズマリー 1、2枝
にんにく 大1かけ
塩 小さじ1前後
白ワイン 1カップ
トマトの水煮または生トマト 1/2 カップ
ブロード(スープ) 2カップ前後
オリーブ油 大さじ2
バター ひとかけ
* ポルチーニの代わりにマッシュルームとエリンギを使って。
* ブロードは市販の鶏のスープの素か野菜スープの素を
ごく薄く溶いて。あるいはお湯でも可。
作り方 1 鶏肉は大きく切り分ける。にんにくは縦ふたつに切って
包丁の背で軽くたたきつぶす。
2 マッシュルームは根元を取って縦ふたつに切り、エリンギは
根元を取って手で大きく縦に裂く。
3 鍋にオリーブ油とにんにくを入れて弱火にかけ、香りが充分
出てきたら取り出す。の鶏肉を入れ、ローズマリーも加えて
強火で焼きつける。カリッと焦げ目がつくくらい表面を焼き
つけるのがポイント。
ローズマリーは取り出して白ワインを注ぎ、(この時火から
一度はずしても可)さらに煮詰める。トマトを加え、
スープと塩も加えて火を弱め、約1時間ことこと煮る。
途中、水分がなくなったら適宜スープかお湯を加えて調節する。
4 別鍋にオリーブ油とバター各少々を熱し、のきのこ類を入れて
強火でさっと焼きつける。
途中での鍋に加え、20分ほど一緒に煮込んで塩味をととのえる。
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