イタリアのおいしい話 #28

「 金運を呼ぶ? レンズ豆とザンポーネの煮込み 」



 親しい友人からのメイルの末尾に‘un bacio(ウン バチォ)’と書かれ ていることがあります。ウンは‘ひとつ’。バチォは‘キス’のことですが、もちろ んこれは親しみを込めたほんの軽い挨拶。それがクリスマス近くになると  ‘Tanti saluti a Panettone ’(パネットーネによろしく)’などと書かれていて微 笑ましく、こんなところにもイタリアの暮らしのなかに、クリスマスにはパネットー ネを食べるという習慣が定着していることを感じます。

   去年のクリスマスにはこのパネットーネというパン菓子についてご紹介しましたが、 「ところで料理のほうはどうなの ?」 という質問をいくつか頂きました。 という訳で今回のミラノ滞在時にも誰かれとなくつかまえては「ねぇクリスマスには 何を食べています?」と聞いていたのですが、これが今ひとつまとまりがつかないの ですね。アメリカのクリスマスに欠かせないとされる‘七面鳥の詰め物 ’といった 有無を言わさぬ代表選手がどうも見つからないのです。  

  友人達にもメイルアンケートをしてみましたが州によって、家によってメニューは まちまち。ローマの友人からは「24日は魚料理、25日には肉料理」そして「24日は家 族で過ごし、25日は友人と賑やかに過ごすもの」といった貴重な答えを頂きましたが。

 自分自身に明確なイタリアのクリスマスの食卓についてのイメージがないのはもっ ともなことで、一度も伺ったことがないのですから。というもの3月のパスクワ(イー スター)とクリスマスは家族水いらずで過ごすものという暗黙のルールがあるので、 さすがにこの日の訪問は遠慮しているのです。

   もっとも今回の滞在中に通っていたミラノのふたつの料理学校は「クリスマスのメ ニュー」と銘打ったコースばかりでした。ただそこでも伝統的な決まりもの料理とい うものはなくて、伊勢えびやトリュフを使ったりといつもより奮発した材料を取り入れ、見た目おしゃれで華やか、そして当日主婦が慌しく準備をしなくてすむよう工夫 されたレシピ、と日本でいうところの‘おもてなしメニュー’‘パーティメニュー’ といった感じでしょうか。

 中で形を変えつつも度々登場した料理に‘詰め物をしたパスタ入りスープ’という ものがありました。これは中部のエミリア・ロマーニャ州の‘カッペレッティ・イン・ ブロード’というメニューに代表されますが、こういったスープパスタは確かにクリ スマスによく食べられるようです。セコンド(主菜)としては鶏肉や七面鳥、子牛肉 やラムなど詰め物をしてオーブンで焼く料理が、いろいろとバリエーション豊かに紹 介されました。

   では大晦日からお正月にかけてはどうかというと、これが版で押したように「レン ズ豆とザンポーネの煮物」という答えが返ってきます。

 ザンポーネ(Zampone)というのは、豚の前足に、骨を抜いて詰め物をしたサラミの1 種。中身は肩肉を始めとしたいろいろな部位の肉と脂、これにこしょうなどのスパイ ス類やにんにく、塩などを加えて味つけしたもので、エミリア・ロマーニャ州のモデ ナという土地で作り始められたとか。同じ中身で三角形のタイプもあり、またほぼ同 じ材料で同様に作ったコテキーノ(Cotechino)と呼ばれるサラミもイタリアでは一般 的。ザンポーネの代わりにこちらをレンズ豆と煮込むこともあります。

 12月に入るとパネットーネやパンドーロとともに、このザンポーネも食料品店や 肉屋の店先に並び始め、最近はすでにゆでて下準備済み、もう食べるだけという便利 な状態の箱入りも売られています。  一方のレンズ豆(Lenticchiaレンティッキァ)はコンタクトレンズのような形をし た直径5mmくらいの小さなお豆。こちらは乾燥して袋詰めで売られています。

   「レンズ豆はお金の形をしているので、これを食べるとお金持ちになれると言われ ている」とか。それで大晦日に新しい年の金運、ひいては幸運を祈って食べる習慣があるそうです。ですからあくまでレンズ豆のほうが主役なんですね。

 以下にご紹介するのは、ローマでホームステイをしていたアンナとジュリオ夫妻か ら習ったレシピですが、でき上がってみるとお金はちょっと貯まりそうもない地味な 雰囲気。レンズ豆がチマチマして見えるからでしょうか。

  ザンポーネやコテキーノは 日本では手に入りずらいのでうちでは太めのソーセージで代用しています。またレンズ豆の代わりに白いんげん豆と一緒に煮込むとボリューム感もでて、冬の季節にぴったりのイタリアの家庭料理ができ上がります。

* レンズ豆とザンポーネの煮込み 材料(4人分)

レンズ豆(乾燥)                   200g
ザンポーネ、コテキーノ             1/2本        
(またはソーセージ8本) パンチェッタ(またはベーコン)      2枚
玉ねぎ、セロリ合わせて            約100g
にんにく                      1かけ
赤唐辛子                     1本
トマト水煮缶                     約1カップ
スープ(野菜)                  1〜1.5カップ
オリーブ油                    大さじ2〜3
塩、黒こしょう                  各適宜           

作り方 1 レンズ豆は30分くらい水に漬けてから10〜15分ゆでる。
  2 にんにく、玉ねぎ、セロリ、パンチェッタ、赤唐辛子はすべてみじんに切る。
   3 鍋にオリーブ油とにんにくを入れて香ばしく炒め、残りのを入れて じっくり炒
   めてから、のレンズ豆を加える。   トマトの水煮缶をつぶしながら加え、スープと塩、
   こしょうも入れて弱火で約20分、 レンズ豆が柔らかくなるまで煮て塩味をととのえる。     途中水気が足りなくなったら適宜お湯またはスープを加えて調節する。
  4 ザンポーネ(またはコテキーノ、ソーセージ)をゆでてに加え、軽く煮る。
   器に盛ってイタリアンパセリをふる。



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