イタリアのおいしい話 #32

「 "リ"がつく おいしい残りもの料理 」



  「料理のレッスン開始よ、台所に来て。今日はリファットを作るわ」 と言いながら、アントネッラが部屋に呼びにきました。シエナで彼女の家 にホームステイしていた時のこと。

  リファット(rifatto)って? "やり直した"とか"作り直した"という意味だけれど……なぁにかしら ん。興味しんしんで台所に行ってみると、前の晩のおかずであるゆで肉の残 骸がそのまま鍋の中に。800gくらいはある子牛肉の塊でしたから、ご 夫妻と私の3人で食べてまだ半分近くが残っていたでしょうか。

 おいしいブロード(スープ)にその旨みを惜しげもなく吐きだしてしまったお肉は、昨夜のようにスープと一緒にハーブなどの薬味を入れたソースで食べてこそおいしいものの、そのままつまんでみてもほとんど味を残していません。

  と思っていると、彼女はさっさっとトマトソースを作り、残っていた牛肉の塊を適当に切り分けて加え、その中で煮始めました。別にき のこもソテーして加え、20分もすると彼女流 "リファット" 料理のでき 上がり。

 イタリアのマンマ達は節約名人。残りものをポンと捨ててしまうようなことはめったにしません。前の晩の余りは、あたり前のように翌日もまた 食卓に登場します。たとえゲストがいても、少しの気取りもなく。それを 食べきるまで何回も食卓に並ぶことすらあるのです。あるいはこのように "リ" なんとかと名前を変えて別の形で登場するのです。

  頭に"リ"がつく料理と言えば、トスカーナ州の伝統的な家庭料理"リボッ リータ"(ribollita)があります。玉ねぎ、セロリ、キャベツなどの野菜と 白いんげん豆を入れたスープ煮。野菜がくたくたに、柔らかく煮崩れるま で煮るので、スープといっても出来上がりにはほとんど水けがありません。

   さらに、それを食べる前に温め直して味を深めるのがこの料理の特徴。 "リ"は"再び"。そして"ボッリータ"は "煮ること"という意味なのです。

 お豆腐のように真っ白で柔らかいリコッタチーズの"リ"も同様。ペコリ ーノなどチーズを作る過程でできる乳清という半透明の液体を再び加熱し、 凝固剤を入れて固めたものがこのチーズ。"もう一度(リ)煮る(コッタ)" という作業からこう呼ばれる訳です。

 このように、イタリア語の"リ"には、"もう一度"とか"再び""繰り返す" という意味あいが含まれることがあるのです。  彼女からは余ったリゾットがおいしく生まれ変わることも教えてもらいました。

  トマトとオレガノ味のリゾットを食べた翌日のランチ。残ってい たリゾットをボールに移して卵をポトンと割り入れて混ぜ、フライパンに 薄く平らにのばしてこんがりと焼き上げました。料理の名前は"リゾット・ リファット"。それはまるでお焼きのように香ばしく、この焼きリゾットと 新鮮な野菜サラダ、そして軽い赤のワインでその日のランチを楽しみまし た。

 さて、前回ご紹介したブロード作りでスープをとった後のうちの残りも のの鶏肉は、中華やイタリアン風味のドレッシングであえてサラダに。牛 肉のほうは、細かく刻んでマッシュポテトと一緒に混ぜ、塩とたっぷりの パルミジャーノ、牛乳などをを加えて俵型にまとめ、これに小麦粉と溶き 卵、パン粉をまぶしつけて……。

 そうです、特製牛肉コロッケとなって、食卓に再デビューをいたします。



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